さとう栄一 現宇都宮市長の任期5期20年のさまざまな取り組みは宇都宮市を大きく変えました。特に、ここ数年の住環境および行政サービスの向上においては、さまざまな外部評価によって証明されているといっても過言ではありません(ex. 住みたい街ランキング(2023年)首都圏4位、住みよさ度(安心度・利便性・快適度・裕福度) 全国3位・共働き子育てしやすい街(2023年) 全国2位・移住者の増加)。
しかしながら、近年、宇都宮市は「女性が働く場がない」という大きな課題に直面しています。さとう栄一 現宇都宮市長は、その危機感とそれに対する対策についてこのように語ります。
女性がもっともっと活躍できる環境を推進
「例えば、東京等に一旦出て行かれた方ですが、 20〜30 代の男性女性を比較すると女性の方が戻ってきていただけていなんです。約 1万人、女性の方が少ないんです。
それで、それに対応するために、宇都宮市内の企業に就職していただいた場合には、企業に対し女性を雇用していただいたということで雇用支援金を出しています。
また、その女性が宇都宮に戻ってきて働き出す時、例えば住む家が必要でしょうから、家賃の補助に加え、家を購入するための補助を出しています」(さとう栄一 現宇都宮市長)。
「また、女性が働くにあたって、男性と違いますから、体調に合わせて仕事をことになるんですね。そこで、まずは女性の方に自分自身の体調を理解し管理できるように、フェムテック(女性の健康課題を解決するテクノロジー)のアプリを宇都宮市が無償で提供するようにします。
これは民間会社のスマートフォンアプリ(ルナルナ)で、これを使うことで、この時期になったら体調が乱れるとか、妊娠についての体調の変化を客観的に把握することができるんです。こういった話は言いにくい等の障壁がありますが、アプリを介してパートナーや上司にも理解をしていただくことができるようになります。
また、産休や育休、時短勤務など職場復帰できる環境づくりのための市内一般企業への支援のために、宇都宮市役所内に女性活躍推進部局を新設女性活躍担当専門員の配置も行っています。
念仏のように女性活躍、女性のため、それだけで終わってしまいがちなんです。そこをきちんと宇都宮市は整理をして、女性が働きやすい働き続けることができる。いつでも社会に出られる、そしていつでも戻ることができる、そういう社会をきちんと作り上げてまいりたいと思うんです」(さとう栄一 現宇都宮市長)。
スポットワークの「タイミー」社と包括連携
宇都宮市における就労におけるもう一つの課題が「雇用創出」です。新型コロナ禍を経て、LRT開業などで社会が大きく変容し、関係人口(宇都宮在住者以外で宇都宮に仕事や学校、観光などで関わっている人々)が増加する中で、宇都宮市は多様な働き方を受け入れる必要が生まれています。
つまり、前段で述べたような女性の就労機会の整備に始まり、企業にとって必要な時に、必要な人材を集ったり、人材を発掘する手段を提供できるようにするなど、多様な働き方の理解促進をする活動です。
そこで、宇都宮市は2023年11月8日、スポットワークという新しい働き方を実現するITプラットフォーム事業者「タイミー」と包括連携提携を締結しました。
タイミ−は、企業や店舗で、人材が足りない時に、スマートフォンアプリを通じて労働者を募集できるサービスです。履歴書提出や面接などをすることなく、必要な時に、必要な時間だけ募集をかけることできます。
例えば、「本日の18時から3時間ホールのスタッフ募集」という告知をタイミー上で出すことで、仮にそれが直前であっても労働者を集めることができるというものです。事業者側にとっては足りない時に募集でき、かつ常時雇用などの負担ないというメリットがあります。
一方、働く側にとっては、自分が働ける時間を選ぶことができるため、「長期は無理だけど、今日だけ3時間だけ働ける」という人もすぐ働くことができるだけでなく、就業後は即時振り込まれるというメリットがあります。
宇都宮市とタイミーの包括連携提携(令和9年3月31日まで)により、市民やさまざまな事業者に、スポットワークという新しい働き方の理解促進を図ることで、介護など人手不足が懸念される分野における、将来的な労働力の確保や女性の就業率向上などの課題解決につなげることを期待できるほか、事業者における就労・雇用に関するデータやノウハウを新たな事業の検討などに活用できるようにしたいとのこと。
「雇用する側も例えば前の日に熱が出ちゃった。スタッフ足りない、どうしよう。っていう時にタイミーで申し込みをかけとくとちゃんとマッチングしてくれて、次の日には面接も入らずに働いてもらうことができる。
これだけじゃなくて、なかなかこう新しい仕事にチャレンジできないとか。お子さんがいらっしゃるから 2 時間しか働けない。こういう方々を働いていただけるチャンスを大きく作れるとそういうサービスだと思うんですよね。
2〜3年休職して、そこでいきなり復帰ってちょっと辛いと思うんですよね。その間に1 時間でも 2 時間でもできることだけ。多分場所的な問題もあると家から近いとかそういうのできるところをやらせてもらえる。そこで経験を鈍らせない。感覚を忘れないで、いつでも即戦力で戻れるという。そういうことにもつながってると思うんです」(さとう栄一 現宇都宮市長)。
タイミーをつかった新しい働き方は、飲食などのサービス業・工場などのみならず介護などの業界業種にも広がっています。事業者側としては、スポットワークを入り口に本採用に至るケースも多く、多様な働き方拡大に寄与することが期待されています(了、文責・編集部)。